椿(ツバキ)も春の主役
今の季節、桜に目が行きますが、椿(ツバキ)も春の主役です。漢字も木へんに春ですから。
この椿は見慣れない椿ですが、紅荒獅子(ベニアラジシ)という八重椿の品種だそうです。美しいというか、見事というか、豪華な椿です。
こちらは藪椿(ヤブツバキ)です。どこか可憐で、それでいてその鮮やかさから色っぽさを感じさせます。
花全体がポトリと落ちる事から嫌われることもあるようですが、藪椿(ヤブツバキ)の木の下に散らばって花が落ちている様子も素敵です。
夏目漱石の俳句に「落ちざまに 虻を伏せたる 椿かな」という句がありますが、戦前の日本の物理学者であり、随筆家、俳人でもあった寺田寅彦の随筆の中に、これに関して面白いものがあります。
寺田寅彦は自身の先生でもある夏目漱石のこの句に対して科学的な検証をしているのです。
「椿の花が落ちる時に、うつ向きに落ち始めても空中で回転して仰向きになる傾向があり、木が高いほど仰向きに落ちる花の数の比率が大きく、低い木だとうつ向きに枝を離れた花は空中で回転する間がないのでそのままにうつ向きに落ちる。
この空中反転作用は花冠の特有な形態による空気の抵抗のはたらき方、花の重心の位置、花の慣性能率等によって決定される」と記している。
さらに夏目漱石の俳句に対して、「虻が花にしがみついてそのままに落下すると、いくらか反転作用を減ずるようになり、すなわち虻を伏せやすくなる」と記しているのです。
俳句をこのように科学的に読む寺田寅彦に敬服いたします。
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